
人間エンジン
Manpowered Snowplow
2024年7月
鉄
新潟県
大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024
作家:東弘一郎
金属を使い、人が関わることで動く立体作品をてがける作家による新作は、自転車を素材にした巨大な車。大きな羽根で雪を吹き飛ばす「ロータリー除雪車」をモチーフに、賑やかな七和地区で豪雪に向き合う住民たちの団結力をイメージした、動く作品。来場者を含む人そのものが動力=エンジンとなる車が誕生する。
作家が「除雪車を人力で動かしたい」といった、漠然としたアイデアをまず提示します。そのアイデアをもとに、まずはドローイングやラフな3D モデルを作り、その絵をもって作家とともに新潟県十日町市七和地区を訪れました。七和地区は地域のお祭りなどの伝統文化がなく、新たなまちの山車をつくるようなイメージで、この作品の提案を喜んでくれました。運転席は3人、後部の自転車には4人乗ることができます。運転席ではハンドルを操作したり、前方のオーガやシュートを回転させたり、上部の回転灯を光らせることができます。外形の寸法は実際の重機を参考にしており、工場で製作が可能なパーツに分解できる設計になっています。パーツは分解されたままメッキ工場から搬入し、現地で地域の方々が選定した雪国用の塗料での塗装を行いました。
基礎の上で設置されるオブジェの作品と違い、稼働する部分が多く、走行中に故障してしまう部分もありました。そのとき、地域の職人である自動車修理の方が、「車輪が同軸であることがカーブを曲がり切れない故障の原因である」と見抜き、いわゆる前輪をデフフリーに変更する改良を加えたことで改善されるなどのやり取りがあり、地域の方々の知恵や段どりを調整していくことが設計のプロセスにおいて重要でした。






